PR・広報は巻き込む社内の規模や、効果を単発であげていくものではないため、その成果を最大化させるためにPR戦略・広報戦略を策定する必要があります。経営・事業計画から活動の方向性を決めたら、次はPR・広報の年間計画を立てましょう。
全社に共有して、共通認識を持った活動を進める上でも、年間計画を1つのカレンダーにまとめると便利です。本記事では、年間計画を3つの視点からどのように進めればいいのか、設定のポイントを交えてご紹介していきます。
PR戦略・広報戦略を検討する順序
年間”計画”と年間”戦略”は異なります。PR戦略・広報戦略を策定する上で、いきなりPR・広報の年間計画を立てる企業が多いようですが、戦略策定に当たって経営・事業戦略の理解はないがしろにできません。
PR・広報は経営・事業成長のスピード・質にプラスアルファをもたらす活動だからこそ「1、経営戦略・事業戦略とのすり合わせ」「2、経営戦略に沿ったPR活動の立案」を整理し、適切なステップに沿って、戦略を策定、年間計画に落とし込んでいく必要があります。
本記事では「3、PR・広報計画立案」について説明していますので、PR・広報戦略前提についてももっと知りたい方は、「PR・広報戦略をはじめて作成するには?」を参考にしてみてください。
PRのおさらい
パブリックリレーションズは、信頼のおける、倫理的なコミュニケーション手法を通し、 組織と組織をとりまくパブリックとの間に、関係と利益を築くため、意思決定の管理を実践することである
Public relations is a decision-making management practice tasked with building relationships and interests between organisations and their publics based on the delivery of information through trusted and ethical communication methods.(IPRA,Oct. 2019)
国際PR協会(IPRA:International Public Relations Association)によるPRの定義
PRとは、「大衆の、公衆の」を意味する”Public”と、「関係、交渉」の”Relations”の頭文字を取った略語です。組織と組織をとりまくパブリックの間の、相互に利益のある関係を築く「戦略的コミュニケーションのプロセス」「思考」であり、混同されるような「情報発信すること”だけ”」がPRではありません。国際PR協会によるPRの定義からも日本国内で使われている「PR」がねじ曲がって伝わっていることがわかるはずです。
「組織と組織をとりまくパブリック」すなわちステークホルダー(企業・行政・NPO等の利害と行動に直接・間接的な利害関係)との関係構築を進めていく活動が『Public Relations』なのです。
PR・広報についてはこちらでもご紹介しているので参考にしてみてください。
PR・広報に力を入れるメリットは?
購買や使用によって個々の体験を魅力に感じていたとしても、それぞれの体験ごとに一貫性がない情報を受け取ってしまうことで企業やサービスを間違って記憶してしまったり、そもそも記憶されないことが起きてしまいます。メディアに取り上げられた、クチコミで知人から話を聞いたところで、一時的な情報となってしまい、それが継続することはありません。だからこそPR戦略・広報戦略を考えるうえで、社内外に一貫してその価値を理解してもらえる状況を作る必要があります。
PR・広報の力で企業・サービスの価値を高めるには、一貫した情報・メッセージをステークホルダーに対して発信し続ける必要があります。
これが実現できれば、企業・事業について望ましいブランディングを行うことができます。戦略的にPR・広報活動をすることで上記のようなメリットが享受できるのです。
PR・広報の年間計画を立ててみましょう
PR・広報は単独で活動する部門ではありません。全社のハブとなり各ステークホルダーとの良好な関係を構築部署だからこそ、全社の動きを把握しておく必要があります。縦軸を関連要素、横軸を月にした年間カレンダーを作成すると一元管理しやすくなります。
PR・広報の年間カレンダーを制作することで、「サービス・新制度の目処がついた際にプレスリリースを出すためだけに共有される」のではなく、先んじて動いていくことで、その情報の伝播のスピードや大きさを最大化させることができるようになります。もちろん、パブリシティを1つとっても事前にメディアと交渉を進め紹介の確約を取るのに時間がかかりますし、連携に必要な情報を把握してない部署同士をPRが全社のハブになって繋いでいくことも重要な役割です。
PRの年間計画策定に重要な3要素
PR・広報の年間計画を策定するには、3つの要素を意識する必要があります。
- 自社年間計画(企業事業の盛り上がりタイミングに合わせた計画、関連部署の活動把握)
- ステークホルダー年間計画(ステークホルダーの年間の活動把握。例:BtoBだと予算策定タイミングなど)
- 社会背景・ニュース年間計画(新制度や毎年の定例行事など、ニュースになりそうな活動の把握)
全社で連動して活動の成果を最大化させれるための「自社の年間計画」、情報発信・関係構築の効果を最大化させるための「ステークホルダーの年間計画」、そして情報伝播の効果を高める「社会の年間計画」を整理していくことが欠かせません。
PR年間計画作成ステップ1:自社年間計画を作る
企業事業の盛り上がりタイミングに合わせた計画、関連部署の活動把握をするための年間計画・カレンダーを作成するのが、自社年間計画です。
新商品・新事業・イベントと行った大きな全社的な活動はもちろん、マーケティング活動(広告・セミナー)なども把握できるものは事前に理解しておきましょう。何をするかだけでなく、どのタイミングに力を入れようとしているのかまで記載していると、PR活動の山(注力時期)をどこに置くのか、重要度の高い活動が重なった場合の準備期間や優先順位を明確にすることができるため、PR会社を巻き込んで活動を進めるなど、柔軟な対応を検討できるようになります。
<自社年間計画にこれを盛り込もう> ・全社の大きな動き(新商品発売、新規事業、周年イベント) ・事業の売り上げに紐づく動き(売り上げをあげやすいタイミング、問い合わせ数が増加する時期) ・マーケティング活動(広告、セミナーの内容、出稿強化のタイミング) ・社内制度・カレンダー(設立記念日、合宿などの行事)
PR年間計画作成ステップ2:ステークホルダー年間計画を作る
情報発信を積極的におこなったところで、ステークホルダー(利害関係者 / 情報発信の対象者)の興味のない内容や検討が難しいタイミングであれば、気にしてもらうことが難しくなってしまいます。情報発信・関係構築の効果を最大化させるためにも、ステークホルダーの年間計画を策定しましょう。
例えば、BtoBで人事系のサービスを提供している企業で考えてみましょう。導入・利用を推進するためにはステークホルダーである人事担当者に情報を届ける必要があります。人事担当者は年間どんなタイミングでどんな業務を進めているのでしょうか?予算検討のタイミングはいつ頃でしょうか?採用業務で逼迫していて人事制度を考えづらいタイミングなどないでしょうか?こういった、ステークホルダーの活動を理解することが非常に需要です。
<自社年間計画にこれを盛り込もう> * ステークホルダーが人事担当者の場合 ・人事の年間行事(新卒採用、内定式、配属検討) ・予算策定に紐づく動き(いつから検討するのか?いつ決定するのか?) ・人事に関連するアワード・認定(健康経営優良法人、働きがいのある企業ランキング) ・人事の繁忙タイミング
PR年間計画作成ステップ3:社会の年間計画を作る
メディアの力を活用し、情報を伝播・拡散させていくには社会トレンドとの紐付けが欠かせません。ニュースになりそうな活動を把握するための「社会の年間計画」を作りましょう。
政府が施行する法改正や”働き方改革”などの注力する取り組み、花見や新生活、長期休暇といった世の中の毎年の定例行事など、世の中が興味を持ちやすいこと(=マスコミが取り上げやすいこと)をカレンダーにすることで、情報発信の際の社会と自社の接合点が検討しやすくなります。
<自社年間計画にこれを盛り込もう> ・政治の動き(法改正や”働き方改革”などの注力する取り組み) ・年中行事(花見や新生活、長期休暇) ・今年ならではの行事(オリンピック開催、新施設誕生)
PR・広報年間計画を作ったあとは
ここまでできれば、これを元にPRの戦術・施策に落とし込んでいくだけです。
カレンダーを元に単発(点)での情報発信ではなく、面で継続して多角的に伝えていく情報伝播の仕組みを考えていきます。PR・広報”施策”年間計画の策定していきましょう。
下記1〜3を意識して策定できればバッチリです。
- 施策計画の策定(トリプルメディアの使い分け、記者会見・イベント、調査など自社年間行事を盛り上げる活動の策定)
- 情報伝播の構造策定(施策計画の各活動を広げていくための活動設計、プレスリリース・ニュースレターの発信、メディアアタックなど)
- 1・2の社内共有(マーケティング、セールスなど連動する部門に共有、タイミング・メッセージをすり合わせる)
また、戦術・施策に落とし込む際に、今回のPR年間計画・カレンダーには組み込まなかった、メディアのスケジュールも意識できると直良いです。
例えば番組改編のタイミングや、特番の検討時期、長期休暇でネタが揃いにくいタイミングなどヒントになる要素がありますので、ぜひ意識してみてください。