優秀な人材獲得のためにますます需要の高まる採用広報。応募数を増やすだけでなく、入社前後のイメージギャップを無くすためにも重要な役割を担っています。
まだまだ新しい考え方・役割の採用広報について、まずはざっくり理解しましょう。
採用広報とは?
採用広報とは、求職者との関係構築を行うための情報発信またその土台を作ることを指します。採用候補者との接点を作り、適切な情報を提供、採用・入社までに関係性を構築するキャンディデイトリレーションズに包括される活動です。
認知獲得による候補者を集めること”だけ”が目的ではなく、自社の価値観と候補者の価値観(前提)の乖離がないように適切な情報を発信、理解の醸成を進めていきます。
採用広報は有効求人倍率の向上により、ますます注目を集めています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると全国平均が1.45倍(2020年2月)となり、採用を行う企業の中でも苦戦をしている企業が増加しています。コロナの影響で多少落ち着きを見せましたが、企業成長のためには人材投資が欠かせないため、今後もこの傾向は加速していくものと考えられています。
採用広報の活動
候補者の認知を獲得するための活動(マーケティング活動)、そこから応募してもらうための活動(マーケティング活動)、応募してもらった候補者に対しての面談(営業・商談)、最終候補者の入社確定(クロージング・契約締結)と、採用広報の活動を事業と同じように捉え活動する企業が増加しています。
事業部では複数人で活動しているものを人事担当者数名で対応するため、その活動の優先順位づけが必要です。
活動としては前提を揃えるための活動「会社資料の作成」「募集要項の作成」をはじめ、候補者との接点を作るために積極的に発信する活動「求人サイトへの広告掲載」「就活イベントへの参加」「メディアへの働きかけによる従業員のインタビュー記事掲載」や、候補者が応募したくなるような動線づくり「自社ブログへの記事掲載」「採用会食の促進」などが実施されています。
採用広報をする上で整理が必要な情報
採用広報では、自社の価値観と候補者の価値観(前提)の乖離がない状態を作る必要があります。そのために取り繕った情報を発信するのではなく、自社や自社を取り巻く環境のファクト(事実)を集約していきます。
PR・広報で作成するファクトブックをベースに作るのも良いでしょう。
企業についての情報
まずは自社の特徴・強みを理解し、社会と合意形成するためのストーリー作り、そのファクトを見つけます。自社にどんな要素があるのかを分解して把握しておくことが大切です。
・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)・理念を理解する
・MVVをどう実現していくのかを知る
・どんなテーマで戦っていくのかを知る
・誕生の背景を知る
・社歴を知る
・世の中の評価・認知を知る
自社を知るための一丁目一番地は、企業として何を軸に、どこに向かおうとしているのか、それをどうやって実現していくのかを理解すること。この前提のすり合わせが欠かせません。
候補者が最も興味を持つのもこの要素ではないでしょうか。
企業としての存在意義であるMVV・理念を把握し、それに対して過去どのようなことを進めてきたのか、未来はどんなことを想定しているのか、時間軸で企業について理解を深めましょう。
合わせて、どのような市場・テーマで戦っていくかも把握をしておく必要があります。「◯◯といえば株式会社△△」「◯◯の第一人者」の”◯◯”は何でしょうか?”◯◯”と言われるために自社には何があるでしょうか?
事業についての情報
企業としての前提整理が済んだら、それを事業でどのように実現していくかについて整理しましょう。市場でどう戦っていくか、何が強みで差別化しているのかなど事業構造の理解はもちろん、企業の全体像から把握することで、事業がなぜ生まれたのか、事業で何を実現しようとしていることをスムーズに理解することができます。
・サービスの想い(ミッション・ビジョン・バリュー)を知る
・ビジネスモデル(事業戦略・収益構造)を知る
・事業を進める上での課題を知る
・差別化のポイント・秀でた技術を知る
・顧客のインサイトを知る
・スポークスパーソンを知る
・事例を知る
組織についての情報
企業成長を進める上で事業と組織は両輪。組織としての考え方についても整理が必要です。採用候補者に対して、自社の組織・カルチャーについて積極的に情報発信することで、自社の価値観と候補者の価値観(前提)の乖離をなくし適切な前提知識を持ってもらった状態、期待値のズレが少ない状態で面談を進めていきましょう。
・組織構造(組織図、組織の作り方)を知る
・社内制度・取り組みを知る
・オフィスを知る
・従業員を知る
・カルチャーを知る
入社後の離職や、オンボーディング(適応期)の長期化は、企業文化や組織構造の想像との乖離によって引き起こされることが少なくありません。企業として何をよしとするのか、何を悪しきとするのかなど明確に基準を伝えることができれば尚良しです。
採用基準・求める人物像についての情報
異なった認識で入社する人が増えると企業文化に悪影響をもたらす可能性も高く、候補者・企業お互いにとってマイナスの影響が出てしまいます。入社時の期待値を調整する上で欠かせない情報です。こちらも整理して候補者に伝えていきましょう。
・採用基準・求める人物像を知る
・採用背景と募集要件を知る
・評価制度を知る
「ミッションのイメージで働きやすい会社を期待していたけど、スピード感を持って働くスタートアップなのでついていけなかった」「経営者の発信では主体的に従業員が活躍している様子だったが、蓋を開けてみると成熟しすぎた会社だった」など、組織の情報と同様に共通認識を持てていないことが不幸の要因になりうる情報です。