中小企業にとって広報が必要な理由は何のか、どうすれば効果的に進めていけるのかをまとめました。なんとなく必要だなと思いつつ広報の優先度が上がっていない企業の皆様はぜひご覧ください。
広報とは?
『広報』は“PR(Public Relations)”を実現するための1機能・役割です。
ステークホルダーとの良好な関係構築を進める際には、協業により何かを作り上げたり、政府・自治体と連携し新しい法案を検討することも選択肢の1つに上がります。広報はその中でも、“情報発信”による関係の構築に特化しています。情報発信の方法は1つではなく、様々な手法でおこないます「プレスリリース」や、記者会見などの「イベント」、「SNS」や「サイト・ホームページ」を使った情報発信もこれに当たります。
企業やサービスイメージを適切に理解してもらう、情報発信の全体像を統合して伝えていく、これを推進するスペシャリストが『広報』です。
広報の役割は大きく下記の3つの分けられます。
- 認知獲得:まずは知ってもらう
- メディアなど他者を巻き込んだ情報発信や、サイト・SNSでの自社で調整できる情報発信
- 理解促進:正しく理解してもらうことで、説明コストを下げる
- 情報発信の際の発信内容の調整、企画、社内を巻き込んだ統合的な情報発信
- 行動変容:共感してもらい、ともにアクションをしてもらう
- ステークホルダーを巻き込んだ活動・情報発信
「その会社を好きで好きで仕方ない人が広報に向いてる!」と語られることもありますが、実は、それぞれの文脈を翻訳してあげることが大切なので、一歩引いて自社をみられる方が適任だったりします。
中小企業に広報が必要な理由は?
日本の企業の99.7%、数にして約421万社は中小企業です(中小企業庁より)。
販促費や人員に制限がある中で、同じ中小企業だけでなく大手企業と戦っていく必要があります。広報は魔法の杖ではありませんので、全てを解決することはできませんが、広報によって認知をあげる、ただしイメージを持ってもらうことができれば、莫大な販促費の投資や、値引きによる交渉をしなくても、顧客に選ばれ、利益の出る事業成長の基盤を作ることができるようになります。
中小企業から見た広報活動のメリット
中小企業が広報活動を行うメリットは大きく3つに分けることができます。
1、認知獲得による、問い合わせの獲得
- 自社についての認知が獲得できる
- 認知した消費者の一部から問い合わせを獲得することができる
2、正しい理解醸成による利益が出る事業基盤の構築
- 認識齟齬なく強みが伝わるので、競合に埋もれずに選ばれる
- 第三者からの信頼をもとに、有益な取引条件を提示できる
- 導入意思決定者、利用者が特徴を理解することで、リピート率向上
3、人材強化基盤の構築
- サービス認知向上により、企業認知が向上。採用強化、優秀な社員の採用
- 第三者からの声をもとに、従業員の満足度、定着率向上
「1、認知獲得」以外は短期ですぐに効果が上がるものではありませんが、広報活動に中長期でじっくり取り組むことで、正しい理解を得ることができます。この蓄積がブランディングに繋がり、目先の売上を立てることだけに視点を向ける活動から開放されます。
中小企業が実施すべき広報活動
中小企業の主な広報活動は第三者を介した情報発信と、自社から直接語りかける情報発信の2つに大別されます。
1、第三者を介した広報活動
第三者を介した発信は、客観的な視点で語られるため信頼を醸成することに強みがあります。また、より消費者と近い知人友人や、影響力の強いメディア・有識者がそれを語ることで、その信頼性を向上させることが可能です。
第三者の文脈で発信されるため、伝えたいことが伝えられるとは限りませんが、どのように伝えるかを一緒に考える(提案)することで、効果的な広報活動となります。
(1)メディアを介した情報発信
メディアにアタックすることで、TVや新聞などで自社の情報を取り上げてもらう方法です。
1枚のプレスリリースをきっかけに製品・サービスが取り上げられ、数多くのマスコミでと紹介されることで、多くの反響を得ることも少なくありません。
と言っても、紹介されたから問い合わせが爆発的に増えるわけではありませんし、増えたとしても一時的なものです。ただし、メディアの影響力は絶大、すぐに問合せに繋がらなくても、メディアをきっかけにサービスの理解を醸成することは可能です。「◯◯テレビや◯◯新聞で見たよ!」と営業時に声をかけられることも少なくありませんので、継続的にメディアとの情報発信を進めていきましょう。
(2)影響力のある第三者からの情報発信
消費者にとって信頼性の高い著名人や企業・自治体から自社を語ってもらう方法です。
第三者からお墨付きをもらうことで、「◯◯さんが言ってるのなら(使ってるのなら)間違いない!」と利用のハードルを下げることが可能です。例えば、下記のようなイメージです。
- 認定・アワード:モンドセレクション、グットデザイン賞、健康経営優良法人など
- 自治体:公民連携、◯◯表彰など
- 著名人・識者:地元の有名企業社長お墨付き、大学教授との共同開発など
- 利用企業・利用者:導入の事例、使用効果など
2、自社から直接語りかける広報活動
第三者とは異なり、自らの声で、その想いを正しく伝える方法です。
どうしても自社からの情報発信ですので、情報を届けることができる範囲が狭いのですが、発信する情報を自身で編集することができ、かつ、主体的に情報を取得しにきてくれる方々に届けることで、深度が深い情報となるためファン獲得・ロイヤリティ向上に強みがあります。
自社のサイトなどに格納・設置していくことで蓄積することができることも1つの魅力です。
第三者を介した発信と合わせ、サービスに込めた想いや、商品の特徴などを、自社サイトやSNSで発信することで、広く伝わる情報と、濃度の濃い情報に合わせて触れる機会を作ることで、その効果を最大化することが可能です。
広報戦略策定のステップ
ステップ1〜5で進めるのが最も効果的ですが、特に難易度が高い領域です。まずはステップ3の「PR・広報計画の立案」からスタートし、半年ほど実施してみた上で、1・2にチャレンジすると良いでしょう。
参考記事;「PR・広報戦略をはじめて作成するには?」で全体の戦略策定方法については見てみてください。
広報の年間スケジュールを立て、どのタイミングに何を進めていくかの立案です。まずはメディアや自社が年間を通してどのようなスケジュールで活動しているのか、そこにどう関わると効果が出そうかを経験を通して理解するための計画を立てていきましょう。
下記3つの年間計画を1つのカレンダーにまとめていきます。全社に共有して、共通認識を持った活動を進める上でも確認しやすい場所に格納しておくのが良いでしょう。
・自社年間計画(企業事業の盛り上がりタイミングに合わせた計画、関連部署の活動把握)
・社会背景・ニュース年間計画(新制度や毎年の定例行事など、ニュースになりそうな活動の把握)
・ステークホルダー年間計画(ステークホルダーの年間の活動把握。例:BtoBだと予算策定タイミングなど)
ステップ1で年間カレンダーを策定したら、カレンダーを元に単発(点)での情報発信ではなく、面で継続して多角的に伝えていく情報伝播の仕組みを考えていきます。PR・広報”施策”年間計画の策定です。
- 施策計画の策定(トリプルメディアの使い分け、記者会見・イベント、調査など自社年間行事を盛り上げる活動の策定)
- 情報伝播の構造策定(施策計画の各活動を広げていくための活動設計、プレスリリース・ニュースレターの発信、メディアキャラバンなど)
- 1・2の社内共有(マーケティング、セールスなど連動する部門に共有、タイミング・メッセージをすり合わせる)
戦略・戦術が策定できればあとは実働するだけです。予定していた活動が計画通りに進んでいるのか?、計画通りに進んでいるにもかかわらず課題になっていることはないか?などを見ていきます。
また、メディアに紹介してもらった内容はクリッピングサービスなどを活用し、抜け漏れなく把握し、SNSやメルマガなどで社外に発信したり、セールス資料におりまぜて信頼性を担保するなど、活動効果を最大化する活動を進めていきましょう。
- 効果検証・評価
- 社内外への共有
中小企業にとって広報活動を進めるメリットはどんなところにあるのかを解説しました。
PR戦略・広報戦略をいきなり作成するのは難しいもの。まずは簡易版でも良いので、まずは2時間ほど使って一度この順序に沿って検討してみてください。
計画した上でもう少し具体的に検討を進めたい場合は、PR会社かフリーランスのPRパーソンに相談してみてください。